大企業と中小企業では最適なビジネス戦略は異なります。
中小企業は資本力がありません。
大企業と同じように製品ラインナップを揃えようとしても技術の差別化ができなかったり、
価格勝負に巻き込まれたりしてビジネスを継続することが難しくなります。
この記事では市場占有率(シェア)に従って、どのようにビジネス戦略を立案していくか、
いわゆる競争地位別戦略に関して解説していきます。
市場占有率によって分類される4つの地位
企業は業界内の市場占有率別(シェア別)に基づいて4つの地位に分類されます。
リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーの4つの地位です。
自社がどのグループに位置するかで、最適なビジネス戦略が異なります。
地位と特徴
それではそれぞれの地位の特徴を解説していきます。
①リーダー
業界最大手です。圧倒的なシェアと技術力を誇る企業です。
リーダー企業は技術力が高いため、製品を差別化することができます。
つまり価格競争に巻き込まれない戦略で戦うことができます。
またシェアも高いということは規模の経済性も働きますので、固定費が安くなります。
いざ価格競争になったとしても高い競争力があります。
ただしシェアが高いため、市場全体が縮小した場合、最も販売額の落ち込みが高くなります。
このため市場そのものを維持するために努力する必要があります。
②チャレンジャー
リーダーに次ぐ2番手の企業です。
リーダー企業に果敢に挑戦する地位にいることから、チャレンジャー企業と呼ばれます。
このグループの場合、資本力はリーダー企業に及びませんが、一部の技術、分野においてリーダーと競争できる力を持っています。
ただしリーダー企業はチャレンジャーの特徴である製品差別化を打ち消すために、
チャレンジャー企業の模倣品を市場に投入してきます。
これを同質化戦略といいます。
このためチャレンジャー企業は特許で権利を確保するなど、常に技術力で勝負していく必要があります。
③ニッチャー
資本力は乏しいのですが、特定のセグメント(分野、顧客)に対してNo.1の地位を築いています。
いわゆるニッチ分野において、他社にない独自の技術力を持ちます。
この企業群はリーダーやチャレンジャーが参入するには市場が狭すぎるニッチ市場をターゲットにしています。
それ故に市場でNo.1になることができます。
しかし市場が狭いうちなら大企業は市場に参入しませんが、
市場が成長すれば大企業が参入してくるリスクもあります。
市場が成長する前にしっかりとブランドを確立しておく必要があります。
④フォロワー
資本力、技術力に乏しい企業です。
当面は資本力を蓄えるために、リーダー企業やチャレンジャー企業の模倣を行っていきます。
競争戦略は価格戦略しかありません。
地位別によって競争戦略は異なる
競争地位ごとの一般的な特徴と戦略傾向を示します。
自社がどの地位にあるのか、そしてそのような戦略が取れるのか、大まかな指針にしてください。
地位 | 特徴 | 経営資源 | 市場目標 | 市場ターゲット | 基本方針 |
リーダー | 最大手 | 質:高い 量:多い | 最大市場占有率 最大利潤 最大ブランドイメージ No.1の維持 | フルカバレッジ(顧客全体) | 製品:フルライン化 価格:非価格対応 チャネル:開放的 広告:全体訴求 |
チャレンジャー | 業界2番手 | 質:高い 量:少ない | 市場占有率の拡大 リーダーへの挑戦 | セミフルカバレッジ | リーダーとの差別化 思い切った価格設定 独自技術開発 |
ニッチャー | ニッチ市場でNo.1 | 質:高い 量:少ない | 特定市場での利潤、ブランドイメージ、 | 特定セグメント | 特定セグメントへの集中 ミニリーダー戦略(特定セグメントでNo.1) |
フォロワー | 現状維持 | 質:低い 量:少ない | 市場での生存と利益の確保 | 経済性セグメント(価格志向のユーザー) | リーダーの模倣 低価格化 |
自社がリーダー企業の場合、競合会社が価格競争に持ち込んだ場合でも、極力価格を下げてはなりません。
なぜならリーダー企業は市場で最大のシェアを持っています。
価格競争した場合、市場全体規模を下げることになるため、最も損害を被るのはリーダーになるからです。
たとえ価格競争で勝ち抜いたとしても、急に価格を元に戻すことはユーザーが許さないでしょう。
多少シェアを下げたとしても、価格を維持して最大利潤の追求に努めるべきです。
スタートアップの起業時はニッチャーを選択するべきです。
大企業が入ってこれない、規模が小さく旨みが少ない市場でNo.1になって名声を稼ぐのです。
仮にその市場が拡大するのであれば、名声を活かして大企業を打ち負かすのです。
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