技術は直線的に進歩するのではありません。
ある技術を開発していくと、大抵の場合、技術の限界点に差し掛かります。
例えば剛性を増すために、素材の厚みを増した場合、暑くなる分、重くなります。
重くなることでエネルギー効率が落ちる機械だったとしたら、剛性とエネルギー効率は相反するパラメーターと言えます。
このように「あっちを立てればこっちが立たず」といった関係をトレードオフの関係と呼びます。
技術の進歩も必ずトレードオフの関係によって、限界が見えてくるのです。
この記事では技術進歩の成長を上手く説明した、技術進歩のS字カーブを分かりやすく解説します。
技術進歩のS字カーブとは
一般的に技術進歩はS字カーブをたどります。
技術開発の初期はゆっくりした技術進歩ですが、途中で指数関数的に技術力が増加します。
その後、投資しても技術力が増加しない停滞期を迎えます。
この関係を図にして見てみましょう。
技術開発初期の特徴
ある技術が開発されたとき、初めは技術進歩はゆっくりした進展を見せます。
まだ研究者が少ないため、物珍しさで開発している状況です。
この時期では、技術をお金に変えることは難しいです。
市場が未成熟なので買ってくれるお客様も少ないのです。
また市場が未成熟のため会社の理解も得ることが難しく、投資額が少ない状況です。
技術の急激な進歩
技術がお金になると思い始めた時期、つまり市場が形成された時期になると
これは儲かると考えた企業が続々と参入してきます。
そうなると特許を書いたり、論文を投稿することで技術が一機に広がっていきます。
改良に改良を重ねる企業努力によって技術進歩が目まぐるしく進展していきます。
技術進歩は指数関数的に伸びていきます。
技術の成熟期
しかし技術には必ず限界が訪れます。
「あっちを立てれればこっちが立たない」といったトレードオフの関係が現れてきます。
そこで企業研究はバランスをとったカスタマイズ製品や、1つの特徴を伸ばした差別化製品を出してきます。
この段階では技術はすでに飽和している状態です。
技術の進展は遅くなり、市場では価格競争が起こり始めます。
技術進歩は非連続的に起こる
ある技術はやがて停滞期を迎えます。
このときになると突然変異のように新技術が生まれるのです。
下図のようにこの停滞期を超えるのは、技術Aではなく、新技術Bであることが多いのです。
例えば録画媒体の進化はVHS→DVD→ブルーレイといったように、異なる技術思想から進化していきました。
カメラも銀塩フィルム→デジタルカメラと全くことのある技術が台頭したのです。
このように技術進歩は、同じ技術から発展していくのではなく別の技術が台頭していきます。
つまり非連続的に技術が進歩していくのです。
持続的イノベーションと破壊的イノベーション
上述したように技術Aの延長で成長していくイノベーションを持続的イノベーション(インクリメンタルイノベーション)といいます。
一方で非連続的に成長していくイノベーションを破壊的イノベーション(ラジカルイノベーション)と呼びます。
技術はある時点で破壊的イノベーションを迎えます。
この破壊的イノベーションに備えることができない企業は衰退していく運命にあります。
イノベーションジレンマとリーダー企業
市場占有率が最も高い企業をリーダー企業と言います。
リーダー企業は既存の技術において勝ち組になっています。
既存技術を志向しているユーザーも、既存技術のさらなる改良を求めています。
このような背景から、破壊的イノベーションを自ら起こすことに抵抗が生じます。
このためリーダー企業は破壊的イノベーションに対応できないのです。
このような現象をイノベーションジレンマと言います。
技術進歩に目を背けないようにしよう
イノベーションジレンマへの対策は難しいです。
会社組織は利益を追求しますので、初期の技術への理解が乏しいのが原因です。
また投資をする際にも内部収益率など、いつに投資資金を回収できるのかといった計算をするため、
投資資金の回収の見込みの少ない新技術へ投資するのには抵抗があります。
リーダー企業がイノベーションジレンマに耐える方法は広い目で技術動向を見ていくしかありません。
技術に対して視野狭窄に落ちいずに、市場全体を俯瞰しながら臨機応変に組織を変えていくのです。
優れた企業とは、組織改革にダイナミズムをもっています。
組織改革によって破壊的イノベーションに対応できるような組織を作り上げることがイノベーションジレンマに打ち勝つ重要な対策と言えます。
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